停車場日記

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2014-04-28 01:41

ボブ・ディランのコンサート・ライブに行ってきた。
           *
会場は大阪のなんばZAPP、
ホールというより大きなライブハウスといった感だ。
1階はオールスタンディング、2階は椅子席。
わたしは椅子席をリザーブしていた。
正解だった。
1階はギュウギュウ詰めで、もはやおしくらまんじゅう状態。
あんなところにいたら酸欠で倒れていただろう。
           *
そんな満杯状態だったのでしかとはわからないが、
目分量で2000と数百人くらいだったと思う。
先月行ったローリング・ストーンズのコンサートが、
東京ドーム数万人単位だったことを思えば、少ないと言えるかもしれない。
そのぶん回数を増やさなければならないが、
たぶんディランはこういうインティメート(親密な)会場でやりたかったのだろう。
そのことはいまにして正しい選択だったと思う。
           *
定時になり、ベルが鳴り、ほどなく1曲目のイントロが流れた。
(ふつう、こういうとき、けっこうジラすのだが、ディランはしなかった)。
最初の曲は「シングス・ハヴ・チェンジド」。
ライトインすると、薄暗いライトのなかに、
白のカッターシャツに黒のジャケットをはおったディランがいた。


無題


印象から言うと、じつに地味なライブだった。
挨拶もなし、曲紹介もなし、せめてと思った最後のバンドメンバーの紹介もなかった。
ただ曲がはじまると薄暗い照明がつく、曲が終わると暗転。
その繰り返し。
しかも肝心のディランにピンスポットさえ当てていないのだ。
ショーアップする気はほとんどないようだ。
              *
とうぜん、客は「往年のヒット曲」をねだる。
客席から「ライク・ア・ローリング・ストーンをやってくれ!」だの、
「ミスター・タンブリンマンを!」との声が飛ぶ。
だがディランは淡々とライブを進める。
多くは最新アルバムの「テンペスト」からの曲だ。
なかに80年代、90年代の曲もあるが、
それらは大きくアレンジされていて、
わたし自身「あれ、なんの曲?」と思ったのもいくつかあった。
              *
わたしはウィスキーのポケット瓶をチビチビやりながら聴いていた。
席は2階席だがけっこう前のほうだ。
ステージが近く見える。
わたしはこころのなかでつぶやいた。
「好きにやってくれ。ボブ、オレはいまとっても気分がいい」。
              *
ストーンズのライブはヒット曲を主体に、
派手なステージングを駆使して、客をノリノリにさせるコンサートだった。
わたしも大いに楽しんだ。
だがディランのはまったく逆だ。
あえて言えば、客のことなどどうでもいいのだ。
ついてこれるやつだけついてくればいい。
そしてそれは、エンターテイメントとは違うもうひとつのライブのありようなのだ。
身を乗り出して貪欲に「聴く」のじゃなく、
受け身になって「聴かせてもらう」、それもまた音楽の快楽なのだ。
             *
アンコールでディランはようやく「過去のヒット曲」をやった。
1曲目は「見張塔からずっと」だった。
イントロがそうだったからわかったものの、
歌い方はモロにくずしていて、オリジナルとはほど遠い。
2曲目は、じつは最初はわからなかった。
歌詞がそうだからそう思ったのだが、
彼の代名詞とも言うべき「風に吹かれて」だったのだ。
アレンジはもちろんのこと、メロディさえも違う。
まったく別物の「風に吹かれて」。
             *
その曲想は当時のキャッチーなメロディとは打って変わって、
暗鬱で、不安げで、あえて言えば「苦渋に満ちた」歌であった。
             *
かつてディランは「時代は変わる」と高らかに歌った。
だがなにが変わったというのだ。
戦争や紛争は相次ぎ、差別や格差は是正されず、
理想の実現はほど遠い。
友よ、その答えは、風に吹かれている。
あのころと同じように「風に吹かれ」いる。
わたしにはそう聞こえた。
             *
わたしは鼻の奥がツンとなった。
有り体に言えばホロリとしたのだ。
             *
ストーンズが過去のお楽しみを提供してくたとすれば、
(それはそれですばらしいのだが)、
ディランはいま、現在を歌っているのだ。
この変わらない時代に対するいらだち、
その絶望と無力感、怒り。
そこにディランの現在があった。
             *
ボブ・ディラン、72歳。
過去の栄光などどうでもいい。
現在(いま)のオレを聴け。でなきゃ失せろ!
             *
言ってみたいね、そういうふうに。
今年、エンターティナーの最高の高みにいるローリング・ストーンズと、
孤高のアーチスト、ボブ・ディランを聴いた。
もういい。
ポール・マッカートニーの再来日も、
ジミー・クリフも行く気がしなくなった。
両極端ながら最高のパフォーマンスを見てしまったのだ。
2014年をこのふたつのライブで記憶しておこう。(ウ



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