停車場日記

× 破壊せよ!

2014-08-24 06:02

電話があった。

「おらだ。わがるか?」
むろんだとも、ツネやんだ。
「むっちや久しぶりやな。何年ぶりだろ」
「東京以来だからな。40年にはなるだろうな」
「生きてたか」
「お互いにな」
                *
上京して最初、わたしは高松出身の友人のアパートに居候していた。
めんどう見のいいやつでそいつの部屋にはいつも4、5人が寝泊まりしていた。
さすがに気が引けた。
そこに出入りしていたのがツネやんだった。
たちまち意気投合した。
たがいにヤクザ映画が大好きで、世の中にケツをまくって生きているところもよく似てた。
しばらくつきあって、
「住むトコないんだったらうち来る?」
「いいね」
で、ツネやんちに世話になることになった。
                 *
ツネやんのねぐらはいちおうビルの2階(階下は魚屋、くせえのなんの)だったが、
なんとも手狭で、一目でビンボーというのがにおってくるような部屋だった。
壁には高倉健の「死んでもらいましょう」のポスターが貼ってあった。
                 *
だがその実、彼の実家は秋田では有数の大手企業で、
不動産を軸にガススタだのスーパーだのを営んでいる「いいトコの子」だった。
仕送りだってたんとあるだろうに、なんでこんな狭い部屋に、
と思ったのだが、すぐに真相が知れた。
送ってくるカネはその日のうちに、その場で使っちまうのだった。
高級クラブだの風俗だのを巡って大盤振る舞いをするのだ。
わたしも相伴したが、ちっともおもしろくなかった。
他人のカネで遊ぶのは性にあわんし、
それより、カネを仇のようにあつかう彼の狂気についていけなかったのだ。
                  *
「で、なによ、急に電話してきて」
「いやさ、おめ、瀬戸内芸術祭さ、かかわってねえべかと思ってな」
「ぜんぜん、かすってもいねえよ」
「そうが」
                  *
わたしも東京ではたいがいムチャをしたが、
やつのムチャは桁外れだった。
池袋で深夜上映のヤクザ映画5本立てを見て帰るさ、
「おりゃー」と奇声ををあげて、居並んで駐車しているクルマの上を、
まさしく八艘飛びのように駆け抜けてゆくのだ。
むろんボンネットも屋根もボコボコだ。
わたしは他人のような顔をして歩道をゆっくり歩む。
彼は「見たか?」と訊く。
オレは「ああ」と応える。
「だが犯罪だぞ。捕まったらどうする?」
「親がカネで解決するさ」
悲しいやつだなあと思った。
             *
よくつるんでケンカもした。
あるときのことだ。5、6人の愚連隊とモメたとき、
やつはオレに「逃げろ」といって、
相手のリーダーらしきオトコともみ合って、
3階の踊り場からともに身を躍らせた。
愚連隊は逃げたが彼は両足骨折で救急車で運ばれた。
「おまえ、死んでたかもしれんぞ」
「ああ、でもそういうのがおもしろいんさ」
親族は誰一人かけつけてこなかった。
                   *
「やろうかな、と思ってさ。瀬戸内芸術祭みたいなこと」
「よせよせ、つまんねえもんに手を出すな。ひどい目にあうぞ」
「でも、たんだ生きててもつまんねえもん」
                    *
わたしは30前にゆえあって帰郷した。
ツネやんはそのときまだ東京に残ってた。
それが今回の電話で、彼もまた秋田に帰ってたのだと知れた。
たぶん親の仕事を引き継いだのだろう。
やがて地元の名士となり、
芸術祭なんてことも議題に乗ったのだろう。


images[2]


「だからさ、やめとけって。あんなのペイするはずはないんだから」
「おめも小利口になったな。損得のことは訊いてねえ」
わたしは渋々知人の電話番号を教えた。
「そいつはかなり深くセトゲーに関わっていたやつだから、
オレからの紹介だからっていうといろいろ教えてくれると思うわ」
「わがった、んだば電話してみる」
待て待て待て、待てぃ!
「おまえ、ヘタに手を出すと破産するぞ」
ツネやんは高らかに笑った。
「いやあ、そったらこつになったらなおおもしろいべ」
                     *
「いいか、瀬戸内芸術祭なんてごたいそうなことを言っているが、
いかさま師がプロデュースし、税金をガバガバつぎ込んで、
クソのような作品並び立ててるんだぜ」 
「いいねえ、そういうのがやりてえんさ」
世の中をコケにするのか、ほう、ならそれもおもしれえ。
                     *
乗った。
ツネやんがやるならそっちに行くわ。
アナーキーでロックな衝動はオレも同じだ。
なんもかんもぶちこわせ!
                     *
うん、あのころのツネがロッカーであったように、
オレもそうありたいよ。(ウ


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