停車場日記

× ナンシー関のいた時代

2014-12-20 02:25

同時代を生きるということにどんな意味があるのだろうか。
同じ空気を吸い、同じ事象に遭遇し、同じ世界を見るということ。
だがその世界の受け止め方、感じ方はそれぞれによって違う。
そしてたまたま似たような感性に触れると
「ああ、この人はオレと同じ時代に生きている」としみじみ感じるのだ。
                      *
わたしにとってボブ・ディランは同時代の人だ。
だがきゃりーぱみゅぱみゅは違う。
違う世界の人だ。
スピルバーグはそうだが、ティム・バートンは違う。
唐十郎はそうだが、蜷川幸雄は違う。
ま、こんなことをずらずら並べていってもキリがない。
なにがいいたいかというと、ナンシー関のことだ。
わたしがもっとも敬愛し、あこがれてやまない孤高のコラムニストだ。
いや「だった」と書くべきだ、ナンシーさんは2002年、39歳という若さでこの世を去った。
                      *
「だれ、それ?」という人もいよう。
こんな版画を彫る人だった。
見たことないかい?


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自画像だ。
だがそこは女心か、いくぶん細めに描いている。
ほんとうはもっとドッカとおデブで、小山のような人だった。
                       *
なぜいまさらナンシー関かというと、
たったいま録画してあったBSドラマの「ナンシー関のいた17年」を観たからだ。
ドラマの出来不出来は問うまい。
ナンシーさんを演じた役者についても「ま、いいか」。
ただわたしはそのドラマを観つつ、何枚もティッシュを使ってしまった。
同時代を生き、アマゾネスのように戦い、花と散ったナンシーさんのために。
                       *
ナンシーさんは主にテレビ時評の分野で活躍した。
ドラマのなかで描かれていることを参照すると、
取材して書いた傑作「信仰の現場」で、
どうやらご自分は取材に向いてないと思われたらしい。
(極度の近視を理由にしていたが、
わたしに別の理由があったのではと推測する。たとえば羞恥心とか)
そこで居ながらにして自宅で書けるテレビ時評に軸足を移したらしい。
                       *
1日中たっぷりテレビを眺め、
画面にあらわれるタレントの言動やたたずまいから時代を読んだ。
その舌鋒は鋭く、怖いもの知らずに「批評」の刃を振り下ろした。
そのゆえもあって「毒舌家」と呼ぶ向きもあった。
だがドラマではこんなエピソードが紹介されていた。
処女作の「顔面手帳」をご両親に見せると、
徹夜で読んだお父さまが、翌朝、
「おめ、人さまの悪口さ書いでゼニさ稼いで恥ずかしくねえべさ」という。
ナンシーさんはつぶやくように「悪口でねえ、批評だべさ」と答える。
要するにナンシー関は世間の常識をしっかり持ったご両親によって育てられた、
(それなりの品格を備えた)じつに常識ある娘だったのだ。
その「常識」によってテレビと切り結んだ。
そして他人の言動をあげつらうことに、
なにより必要なことは当人の品性だということを身をもって実践した。
                         *
もう、いいか。
ナンシー関についてはいくらでも書けるが、もうよそう。
ただふたつみつ補足をしておこう。
                         *
ひとつはナンシーの死後、何人かのエピゴーネンが出てきたが、
どれもが卑しい文体模写でしかなかった。
ナンシーの文体は誰にも真似られない。
わたしもコラムめいた文章を書くときに、ナンシーさんの本を読み返すことがある。
それは文体を真似ようというのではない。
ただナンシーさんから「覚悟」と「ユーモア」をいただくための儀式のようなものだ。
                        *
90年代、わたしがナンシーさんを知ってから、
ずっと彼女の「追っかけ」をやってきた。
一時期わたしは「週刊朝日」と「週刊新潮」といういわば左右両極の週刊誌を購入していたが、
それはナンシー関のコラムを読みたいがためであった。
同時代、少なくとも10年間はナンシー関と同じ空気を吸っていたのだ。
なんと誇らしいことか。
                        *
そういう人と出会えること。
それもまた人生の大いなる喜びなのだ。(ウエ





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